玉川上水について

写真:加藤嘉六 

玉川上水はこんなところ


水と緑の大動脈

玉川上水は武蔵野台地を東西に貫いて流れる水と緑の大動脈です。

いきものたちのレフュージア(避難場所)&通り道

雑木林や畑が失われ、行き場を失ったいきものたちがここでひっそりと暮らしています。玉川上水はいきものたちのレフュージア(避難場所)であり、山と都市を結ぶ通り道です。

人と自然をつなげ、活動が生まれる場

玉川上水の不思議な魅力は人をひきつけ、驚くほど様々な活動が展開しています。

歩く博物館

見ようとすると、まだ見ぬ世界がこんなにも近くにあり、自然や歴史の「歩く博物館」のようです。

水と緑の大動脈 

武蔵野台地から湧き出す自然の川の多くは傾斜に沿って都心を迂回して流れ、東京湾に至ります。一方、玉川上水は台地の一番標高の高い土地(尾根筋)を掘削して造った水路で、山から都心に向かって流れています。この貴重なグリーンベルトは生き物たちの通り道となり、江戸城跡(皇居)・明治神宮・新宿御苑など、都心の緑地の生物多様性を支えているようです。

羽村から取水された多摩川の水は玉川上水を小平監視所まで流れ、そこから東村山浄水場に導かれます。小平監視所の下流には、現在昭島で高度処理された下水処理水が流れています。浅間橋からは地下水路を通って神田川に放流され、やがて海に至ります。

いきものたちのレフュージア(避難場所)&通り道

多摩山地と都心をむすぶ玉川上水の流域は、絶滅危惧種も含む多様ないきものの生息地となっています。水路自体は禁足地となっており、いきものたちにとってまさにパラダイスです。戦後の宅地開発で住処を奪われてきた小さないきものたちにとっての避難場所となりました。 

玉川上水各地で活動する団体の観察データに基づき制作。イラストは、地域のひとたちが描き、楽しいものになりました。(2013年ちむくい発行)

人と自然をつなげ、活動が生まれる場 

玉川上水は現在、緑の多い緑地として保存され、公園や遊歩道、木漏れ日あふれる水辺の小路として人がつどい、休日には多様なイベントも開催されています。

江戸時代以降、人々の暮らしに合わせてその姿を変えてきた玉川上水。1960年代には玉川上水全域の埋め立てと高速道路化計画に住民が反対し、現在の形として残った歴史もあります。人々の意思によって作られ、人々の意思によって生き残った緑の回廊です。これから先も現在のような姿で残っていくとは限りません。今を生きる私たちの選択によって変わっていくのです。

歩く博物館

価値の高い史跡や自 然を体験できる

                                                                                                                                                 写真:加藤嘉六
玉川上水は1653年に高度な土木技術によって造られた上水路です。江戸の急速な人口増加による深刻な水不足を解消するため、約8か月という短期間で完成しました。羽村の取水堰から四谷大木戸まで約43キロメートルありますが、高低差はわずか90メートルしかありません。このようなごくゆるい傾斜に水を通すには、非常に高度な技術が必要でした。

玉川上水は江戸市中に水を運んだだけではなく、石器時代以降人の住めなかったススキ野原にも水をもたらしました。飲み水を得た土地に人が住み、農耕を始めることで大きな歴史的変化がもたらされたのです。

このように、玉川上水はそれ自体が非常に価値のある建造物であり、江戸の歴史を変えた重要な遺産であり、東京における希少な自然の宝庫でもあります。玉川上水を歩くことで、こうした様々な価値に触れ、学ぶことができます。